葬祭関係者ならどなたでもご存じ『遺体用布団』。
どのタイミングでどのように使用するかと申しますと・・・
たとえば病院や各施設等でお亡くなりになられた方を葬儀屋さんがお迎えに伺った際
私どもは(ほぼ)必ず寝台車に備え付けのストレッチャーで、ご遺体の安置されている場所まで向かいます。
そしてご遺体は、それまで安置されていたベッドなどからストレッチャーへ移されるわけですが、その際、直接ストレッチャーへお乗せするわけではないんですね。
まず一般的に
ストレッチャーには、移送先でご遺体を手吊りで移動する際のため、あらかじめ布製の担架を敷きます。
そしてその担架の上にご遺体用のお布団が敷かれるんですね。
そうすることで
移送先のご遺体を安置する場所には、このお布団ごとお寝かせするわけです。
ご遺体を横たわらせて差し上げる敷布団と枕、そして掛布団。
もちろん中綿が入っていますが
皆様が普段使用されているお布団と比べると、かなり薄めのものではあります。
ただこれには理由がありまして
このご遺体用布団はそのまま、故人様をご納棺する際にもお布団ごとお棺にお納めしますので、最終的には火葬の際、お布団も燃やされることになります。
もしも過度に分厚い中綿の入った布団を使用しますと
火葬の際に様々な不都合があるからなんです。
現在のご遺体用布団は結構よく考えられた作りなんです。
一般的にご遺体用布団の敷布団は、大体標準サイズのお棺の内寸に合わせて作られていますので、その幅は狭い(約55センチ)のですが
その外側に、中綿の入っていないシーツのような布が付いているものがあります。
これがあることで
たとえばご自宅のお布団の上に安置する際、ご遺体用布団の敷布団の横幅を広げるような形であつらえられたシーツで、用意しておいたお布団をくるむことが出来ます。
つまり
ご自宅でご用意いただいた敷布団にシーツを掛けなくとも、お布団全体が白い布で覆われるかたちにできるわけです。
さらにはこの、ご遺体用敷布団にしつらえられたシーツのような布
ご遺体を移動する際には、ご遺体全体を包むような構造にもなっているんです。
故人様を移動する際
たとえ一時的にでも、屋外に連れ出すことになる場合が少なくありません。
ご自宅の前に停めた寝台車からお部屋へ移す際
仮に強い風が吹いていたりしますと、掛布団が風で飛ばされてしまうかもしれません。
そこまでいかなくとも
ご移動の際、掛布団がめくれてご遺体が晒されるかもしれません。
これを防ぐことが出来るわけなんです。
そしてまた現在では
ご遺体用敷布団の端には布製の把手が付いているものが多いです。
これによって
特に納棺の際などには、敷布団の把手を持ってお棺にお納めできるわけです。
・・・かように、なかなかよく出来ているものなんです。
♢
で、このご遺体用布団。
ほぼ必ず、すべてのご遺体に使用するものなわけなんですが・・・
私どもが故人様をお迎えに伺う病院によっては
『ご遺体用布団は差し替え』というシステムを取っているところがあるんです。
どういうことかと申しますと
葬儀屋さんが故人様をお迎えに伺ったとき、すでにご遺体はご遺体用布団に安置されている病院があるんです。
つまり私どもが持参するご遺体用布団は使用しない、と。
すでに用意されて使用されたご遺体用布団の代わりに、お迎えに伺った葬儀屋さんの持参したお布団を病院に差し上げることで『ご遺体用布団差し替え』というかたちになるわけです。
これによって
(表現が正しいか分かりませんが)病院側も葬儀屋さん側も “ 損得なし ” となるわけなんですね・・・
さて。
ここでちょっとした、葬儀屋さんとしての愚痴を(笑汗)
・・・『布団差し替えシステム』の病院が用意するご遺体用布団
ウチが用意する布団より良かったことが無い!
枕は申し訳程度の小さなものだったり
ご遺体をくるむシーツの付いてないものだったり
掛布団とは名ばかりの、中綿の入っていないものだったり
今じゃほぼ常識の、敷布団に把手も付いてないものだったり。
そりゃね、同じ一組のご遺体用布団ではあるけれど
なァんか損した気分になる。
・・・こんなの自慢にもなりませんけれど
ウチが用意するご遺体用布団、結構(というか、かなり)ランクの高いものを使用しているんです。
先にご説明した付加機能は全部網羅してますし
枕だって、頭が動かないように、窪みの付いた大きめのものが付いています。
当然、その仕入れ単価は高くなりますけれど
ご遺体をお寝かせするお布団ですもの、そこはケチってはいけないでしょう、と。
手前味噌ですけれど
もし私が亡くなったとき、私はウチの布団で安置されたいって思いますもの。
というか、一方のホンネも明かしますと
ちゃんとしたご遺体用布団の方が、私どものその後のお仕事もスムーズに進めることが出来たりするんです。
どこへお連れするにしてもそれ相応の対応が出来るし
何より使いやすいです。
使っていて安心できるんです・・・
♢
お葬式の単価が下がっている昨今ですが
一方で葬祭備品や消耗品の仕入れ単価は年々上がってます。
会社としては仕入れ原価の削減みたいな取り組みも必要なのでしょうが
ご遺体用布団だけは絶対、ランクは落としたくない。
・・・てか、布団差し替えシステムの病院
ウチの布団見てどう思うんだろ。
(良い布団が来た!ラッキー)とか思うのかなぁ・・・