映画 『 白いリボン 』
ようやく少しだけノンビリできそうだということで
先週末に映画を借りてきました。
特段の前情報も無いまま、何となく惹かれて借りた作品がこれ。
・・・何の気なしに借りた映画でしたが
かなり重苦しい空気の漂う映画でした ^^;
観ていて少々疲れる印象があるのですが
不思議な魅力とともに、いろいろと考えさせられる作品。
本作を観るにあたって
何よりもまず、本作の時代背景と舞台設定を理解するところが重要かと思います。
時代は第一次世界大戦の前年。
舞台はドイツの(おそらく)北部地方の片田舎。
村で力を持つのは、以下の三人。
まずは村の経済を支える、実質的な支配者である男爵。
村人たちの健康をあずかるドクター。
そして
村の宗教であるプロテスタント教会の牧師。
圧倒的な男尊女卑社会で、特に上記三人の男性は皆高圧的です。
映画は
馬に乗って帰宅の途にあったドクターが、自宅そばの木と木の間に “ 意図的に ” 張られた細い針金によって馬が転倒し、大怪我を負うところからはじまります。
そしてその後も、小さな村のなかで次々と不可解な事故や事件が頻発します。
男爵の運営する製材所で働く女性の事故死。
男爵の畑が荒らされる事件。
男爵の息子が行方不明となり、その後拷問を受けた状態で発見される。
村人たちは皆
こうした事故や事件を見て見ぬふりをするかのよう。
「一体この村で何が起こっているのか」
ここまでの流れだけをみると
「ドイツ版『横溝正史シリーズ』?」ともとれそうなものですが・・・
凡百のミステリー映画とは一線を画す
実際は全く異なった趣の映画でした・・・
深いといえば、これほど深い映画もなかなか無いと思います。
・・・この映画は
他者よりも力を持った人間が犯す過ちと
その支配下にある人間がどのように歪んでいくのかという構図を、歴史と絡めた形で描き出した作品です。
本作には様々な「支配者と被支配者の構図」があります。
「雇用者」対「被雇用者」
「宗教者」対「信者」
「男」対「女」
「大人」対「子供」
これらのパラダイムのなかで
人間は「支配者」も「被支配者」も、ゆっくりと歪んでゆくのだということ。
そして
「第一次世界大戦の前年」であるという設定が
本作に仕掛けられたいちばんの “ 爆弾 ” として、私たちに突きつけられます。
本作に登場する
様々な支配構造のなかで苦悩しながら成長する子どもたちは
この映画の約20年後、“ あの独裁者 ” を支持することになるのだということ・・・
とにかく深い映画です。
軽々にお勧めできる類の映画ではありませんが・・・