『悪の経典』 貴志祐介
これまでに読んてきた貴志さんの作品は
『黒い家』
『硝子のハンマー』
『青の炎』
くらいです。
これは個人的な印象なんですけど
貴志さんの文章って、けっこう句読点が多いんです。
読んでいる私のリズムと文章のリズムが合わないというか
何というか、余計な息継ぎを強制されているような・・・
そのあたり、私としては読むのに躊躇するところだったりするんです。
それでも
昨年映画化もされて何かと話題にもなったということで、手に取ってみました。
晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。
しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。
学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだとき―。
ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。
(以上、上巻背表紙説明より)
圧倒的人気を誇る教師、ハスミンこと蓮実聖司は問題解決の為に裏で巧妙な細工と犯罪を重ねていた。
三人の生徒が蓮実の真の貌に気づくが時すでに遅く、学校祭の準備に集まったクラスを襲う、血塗られた恐怖の一夜。
蓮実による狂気の殺戮が始まった!
ミステリー界の話題を攫った超弩級エンターテインメント。
(以上、下巻背表紙説明より)
結局のところ
本作を是とするか非とするかの分かれ目は、主人公蓮実聖司への評価なのだと思います・・・
本作のなかでの蓮実
たしかに、その思考や行動に理解し難いものが感じられます。
(なんでそんな些細ことで殺意を覚える?)
(どうしてそうも簡単に人を殺めることが出来る?)
蓮実本人にしてみれば
目的は「殺すこと」ではなく、自身にとって邪魔なものを「排除する」ことなのでしょう。
殺人という行為は、その一手段でしかないということ。
殺したいから殺すというより、排除したいから殺す。
でも排除することへの躊躇はない、と。
・・・たしかにコワイ (><)
・・・正直
『共感性欠如』とか『サイコパス』とか言われても、よく分かりません。
私の父がそちら方面の専門(精神科の医師)なので
私が若かりし頃に尋ねてみたことがあるんですが・・・やっぱよく分かりませんでした。
ただ
『サイコパス』という概念自体が全くのフィクションだというわけではない、ということは理解したという程度。
でも
じゃ蓮実の思考と行動を読み手である私たちが理解できる、或いは受け入れられるかというと、そこもまた微妙なところのような気がします。
うがった見方をすれば
『サイコパス』という設定が、何でもアリな感じの免罪符になってない?とも考えられるわけです・・・
「サイコパスなんだから常人には理解できない」
そう言われてしまうと、読み手としては受け入れるしかないというか・・・(汗)
読後感はあまり良くありませんでした(汗)
上巻ではそれなりに読み進めることが出来たのですが
下巻はもう、ひたすら殺人描写がこれでもかというくらいに続きます。
正直、ちょっと辟易としました・・・(><)
そしていちばんイヤだったのが
下巻の巻末に、本作を映画化された監督さんが寄せられた解説文でした。
私としては、到底同意しかねる内容でしたので・・・
映画公開の際、AKBの方が「この映画はキライ」とか仰ってたそうですが
私も多分、同様の感想を持つと思います。
♢
ただちょっとだけ(おぉ?)と思ったのが
本作で数多登場する生徒たちのなかにロックバンドを組んでいるのがいて、その高校生バンドが演奏するのがドリーム・シアターの曲だってんですから、そりゃビックリでしょ(驚)
高校生のくせに(失礼ッ)7弦ギターを操るとか
マイク・ポートノイばりのドラムを叩くとか
ちょっとあり得ないだろ?とか思ったもんでした・・・
(本題に関係なくてスミマセン)