カトリック葬儀の棺の向き
たとえば仏教なら
ご遺体或いはお棺の安置する向きは大体決まってきます。
『頭北面西右脇臥(ずほくめんさいうきょうが)』
葬儀屋さんなら誰でも知ってる言葉ですが・・・
これは御釈迦様が入滅(にゅうめつ=亡くなられた)された際に
頭が北を向いていて、そのご尊顔が西を向き、右の脇腹が下になっていたことを表す言葉です。
『釈迦涅槃像』を思い出していただければ分かりますね。
正面から見ると必ず顔が左にあって、右脇腹が下にきています。
よく「北枕」と言いますが
つまりは御釈迦様の入滅されたお姿から来るものです。
だから亡くなられた方のご安置される方角は、基本的には北枕。
北枕が難しい場合には西枕、となります( “面西” になぞらえて)。
そしてそれは
葬儀場でのお棺の安置についても同様に考えられる場合が多いです。
対してキリスト教。
ご遺体についてもお棺についても
基本的に、そのご安置される方角に対する考え方などはありません。
その場所によって、より良いとされる方法を考えたうえでご安置されるのが一般的です。
問題はカトリック。
日本のカトリック教会における、基本的なお棺の安置に対する考え方は「祭壇に対して縦安置」です。
教会聖堂の都合上、一部の教会では横安置されるところもあります。
しかし基本的には、可能な限り「縦安置」となります。
さて、ではそのお身体の向きはどうでしょう。
結論から言うと、二通りの考え方があるようです。
① 頭を祭壇に向けてご安置する。
② ①とは逆に、頭を手前側にしてご安置する。
最終的には司式される神父様のお考えによるのですが・・・
では何故このような見解の相違があるのでしょうか。
私なりに得た情報を集約しますと
①を採択される考え方は
「祭壇に足を向けることを嫌う」というところが大きいようです。
対して②を採択される考え方は
「キリスト教は復活を信じる宗教である。
終わり(終末)の日、故人が復活された際に起き上がったとき、その顔は祭壇を向いているように」というもののようです。
普通の考え方でいけば、①の方がより違和感を感じなくて済むような気がします。
しかしその理由を聞けば、②の考え方が分からなくもありません。
現状、私の知る限り
①の考え方が多勢を占めているようにお見受けするのですが・・・
葬儀屋さん的目線で申しますと
正直(どっちでも良いから統一してくれ)というところがホンネです(汗)
時折あるんです。
「以前にA教会でお葬式をされたご親族が、今度はB教会に所属する別のご親族のお葬式に参列される」というケースが。
で、A教会では①だったのが、B教会では②の考え方だったということが。
ご遺族ご親族としては、若干の違和感を覚えなくもありません。
特にご遺体及びお棺の扱いという点で、デリケートな部分でもあります。
「どっちでもいい」はいちばん困るんです・・・
「ねェ~、今夜の食事、フレンチが良い?
それともイタリアンが良い~?」
「どっちでもいいよォ~」
・・・これがいちばんダメ!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 【 追記 】 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
本日(平成23年12月6日)
とある、敬愛するカトリック司祭からご意見をいただきました。
曰く
「(上記)②の由来は
信徒たちは、自身最後のミサに与るという意味で、顔は祭壇に向かって手前に来るように安置する。
つまり起きあげれば祭壇を向くことになり、ミサに与るという形になる。
対して司祭の葬儀の場合は信徒と逆で、この世における司祭職としての最後のミサを司式する、という意味がある。
よって司祭の顔は起き上がった際に信徒たちを向くよう、頭を祭壇側にして安置する」
とのことでした。
ご指摘をいただいたJ神父様に感謝いたします。