『苦役列車』 西村賢太
第144回芥川賞受賞作。
受賞会見での西村さんのコメント
「自宅にいて、そろそろ風俗行こうかなと思ってました」
にはビックリしましたね~(笑)
新潮社 刊 ¥1,200(税別)
個人的に
これまでは芥川賞受賞作にはあまり食指が動かなかったのですが・・・
テレビ画面で流れた西村さんの受賞会見をみて
(こりゃ~スゴイ人が受賞したもんだなァ)と、非常に興味を持ちました。
作者ご自身の生い立ちや、置かれていた環境について申し述べることは控えさせていただきます。
すでにご存知の方も多いことでしょうし
それをお知りになりたければ、取りも直さず本作をお読みいただければよろしいのですから。
・・・つまりこれは
作者である西村さんの、完全な私小説であります。
ご自身の体験を、(おそらく)ほぼ忠実に文章にしたものかと思われます。
描かれる内容は、決して明るいものではありません。
ひとりの堕ちた人間(=作者)の陰鬱とした生活が、淡々と描かれています。
しかし
そのことが却って潔く感じられます。
ここまで化粧っ毛の無い等身大の自分を曝け出すことは、とっても勇気の要ることじゃないでしょうか。
少なくとも、私には到底真似の出来ることじゃありません(汗)
かといって、開き直っているというのとも違う気がします。
おそらく
徹底的に、自身を俯瞰した視点で捉えているからじゃないでしょうか。
その文体も特徴的です。
私の場合は
西村さんの文体がとても心地良く感じられました。
私には文学的素養など微塵も備わっておりませんが
文体がとてもリズミカルで、音楽的な心地良さを感じさせてくれました。
少々レトロな言葉の選び方も
ただ奇をてらったという類のものではなくて、ちゃんと意味のある選択なのだと感じます。
結果
堕落しきった主人公も
鬱々とした世界も
必要以上の暗さを伴うことなく軽く読めてしまう感覚は、新鮮さを感じます。
エラそうに申しますが、センスを感じます。
インテリジェンスも。
作者である西村さんと私は、ほぼ同年代。
西村さんは堕落した生活をされていたと仰る(事実そうなのでしょう)が
一応、社会的には “普通に” 生きてきたつもりの私が
何となく劣等感を感じてしまうのは何故なんでしょうか・・・???