『廃墟に乞う』 佐々木譲
私は佐々木さんの熱烈なファンというわけではありませんが、この作品は直木賞受賞作ということなので・・・。
ある事件で遭遇した出来事によって心を病んでしまった仙道刑事。
休職を命じられて心のリハビリに専心するなか、様々な事件の関係者から、何故か彼に真相を究明して欲しいという依頼が舞い込みます。
もちろん仙道刑事は休職中ですから、表立った捜査に加わることは出来ません。
“非番の刑事”という立場で、事件の関係者から話を聞いて回ります。
そこから浮かび上がる、事件の裏に見え隠れする事情とは・・・
っていう感じのお話です。
小作品の連作という形をとった本。
横山秀夫さん(『半落ち』『クライマーズ・ハイ』)の作品によくあるパターンですよね・・・
ストーリーとしてのインパクトは、実はそれほどでもないな~という印象です。
もちろんそれぞれのお話は面白いのですが、“この手”の手法だけで言えば、やはり横山秀夫さんの方が個人的には好みです。
ただ
舞台となっている北海道辺境地域などの寒々とした情景描写が、主人公である仙道刑事の孤独な心象と巧みにリンクしていて、その空気感がこちらにもひしひしと伝わってきます。
例えるなら
北海道を舞台とした西部劇の現代版、とでも言いましょうか・・・
この本を読んでい思い浮かべたのは
クリント・イーストウッド監督の映画・『許されざる者』です。
そして私の大好きな映画『暗黒街の二人』。
あれらの映画もまた、風景描写と登場人物の心象とが絶妙にシンクロしていました。
「面白かったなァ」という感想というより
「上手いなァ」という感想、でした♪