映画 『 エンディングノート 』 ①
少し前にあったCCFIメンバーとのネット会合の場で話にあがったんです。
「そういえば 『エンディングノート』 はご覧になりました・・・?」
・・・私、内心ドキッとしたんです。
(オレ、まだ観てねぇや・・・)
ずっと(観たい)と思っていたのに。
いや、ずっと(観なきゃいけない)と思っていたのに・・・
映画のレンタル店でも気にして探してはいたんですが、どうやら見当たらない。
もしかすると、セルDVDのみでレンタルは解禁されていなかったのかもしれません。
で、先の会合での話がずっと頭の隅にあって
ようやく重い腰を上げて、セルDVDを購入して観ることにしたのでした。
2011年公開。
すでにご存知の方も多いかと存じます。
映画製作に携わっていらっしゃる砂田麻美さんの、監督第一作目。
砂田監督ご自身の実父・砂田知昭さんの
がん告知を宣告されてからその一生を終えるまでをフィルムに捉えた、ドキュメンタリー映画です。
(詳細は映画公式サイトをご覧ください)
・・・葬儀屋さん的には
劇場公開時に是非とも観に行っておかなければならないはずの映画でした。
もちろん本作の評判は聞こえてきていたんです。
これは言い訳なんですけど
だからこそ私としては劇場で1回観るだけじゃなくて、DVDを借りてしっかり腰を落ち着けて観ようと思っていたんです・・・
で
今回はこの映画を、葬儀屋さん的視点から感想を述べたいと思います。
まずやはりこの映画
葬祭業に携わるすべての人は、この映画で映し出されるすべてを受けとめなければならないと思いました。
或いは葬儀屋さんのみならず
何らかの形で人間の生と死に携わる、すべての人はこの映画から感じなければならない、と。
至極当たり前のことなのですが
すべての人生に対して、その尊厳は等しく守られなければなりません。
生命そのものも
ご本人が辿られた人生も
その足跡も生き様も。
そしてそこには
当事者にしか分かり得ない大切な想いがあるということ。
そういう当たり前の事実がすべての(葬儀)御依頼者の背景にあるのだということを
私たち葬儀屋さんはしっかりと受け止めなければならないと、あらためて思いました。
当事者皆様の想いを、他者である葬儀屋さんが理解できるとは申しません。
しかし、それはたしかにそこに在る。
葬儀屋さんにとって
人間の死は、ある意味 “ 日常 ” なんです。
日々、亡くなった方を「葬る」お手伝いをすることを生業としているのですから
仮にそれが “ 日常 ” でなくなったとしたら、職業としての葬儀屋さんとしては問題なのです。
しかしその一方で
私たちは日々の業務に携わるなかで「人の死を軽んじてしまうかもしれない」という危険と、常に背中合わせだったりするんです。
死が “ 日常 ” であるが故の、恐ろしいハザードなのです。
・・・そういう危険を孕んだ私たちにとって
この映画は非常に明快な回答と警鐘を提示しているように思います。
つまり
死とは「生の結果」であって、大切なのは「死に至るまでのプロセス、つまり人生」であると。
死を見て、それのみを見ているだけではいけない。
そこに至る人生を尊んでこそ、死を尊ぶことが出来るのだ、と・・・
そしてここからは
実務者としての葬儀屋さん的意見。
ご本人がキリスト教(カトリック)のお葬式を選択した理由は
「コストがリーズナブルだから」(ご本人談)というものでした。
ご本人がそう思われた根拠がどこからきたものかは存じ上げません。
私の知る限りにおいて
必ずしも今日のお葬式において
「仏式葬儀=コストがかかる」
「キリスト教葬儀=リーズナブル」
であるとは言い切れないと思います。
しかし問題は
本作において「(ご本人が)そのように思われたこと」です。
この事実を
私たち葬儀屋さんも、すべての宗教者も、真摯に受け止めるべきだと思います。
それからもうひとつ。
「葬儀は近親者のみで」というのが生前のご本人のご希望でした。
で
映画の最後では葬儀ミサの様子が映し出されますが
結構な人数の方が参列に訪れていらっしゃるようにお見受けいたしました。
ご本人の「近親者のみ」の解釈はファジーなものです。
基本的には
家族・親族、友人・知人、会社関係者を含めた “ 近親者 ” という表現だったと思います。
「近親者」という表現には少々デリケートな部分がありまして
果たしてどこまでの範囲を「近親者」とするか、やや難しいところなんです。
だからこそ
ご本人は事前にエンディングノートを書いて、連絡する具体的相手を(ある程度)明確にされていたのかと。
画面から拝見する限りにおいて
お葬式は滞りなく進行し、終了したものと思います。
ただそこにはやはり
ご本人の、生前の周到な準備があってこその「成功」だと思うんです。
「近親者のみで」「家族葬で」と仰ることは簡単です。
ただ、やはりそこにはそれなりの考えと準備があった方が良いんですね・・・
(続く)