『 MISSING 』 本多孝好
本多孝好さんの作品といえば
葬儀屋さんの間では 『MOMENT』や『WILL』といった作品が有名です。
物語の登場人物に葬儀屋さんが出てくるから、なんですね。
すでに本多さんの作品を読まれた方はご存知かと思いますが
彼の作品の多くは「死」をテーマとして取り上げたお話だったりします。
「死」と相対することによって、生きることの意味を問いかける作風が多いかと。
で、この作品。
1999年に刊行された、本多さんのデビュー作。
2000年の『 このミステリーがすごい! 』でベスト10に選ばれたそうです。
ずっと読みたいと思っていたのですが
肝心の本がなかなか見つからなかったんです(私の探し方がヘタともいう)
で、ようやく手に入れて拝読させていただきました、と ♪
本作は5つのお話が集められた、短編集です。
・・・短編集の良いところって
たとえば夜眠る前に読む場合など「一晩一話」みたいな区切りがつけられるので便利です ♪
睡眠不足に陥りにくいというか・・・(笑)
①「眠りの海」
②「祈灯」
③「蝉の証」
④「瑠璃」
⑤「彼の棲む場所」
ミステリーというよりも
登場人物の「秘めたる思い」をつまびらかにする、というスタンスの人間ドラマかと。
そこに「死」というキーワードが絡むことで “ ミステリー ” とカテゴライズされたのでしょう。
5話それぞれの紹介は省かせていただきます m(_ _)m
ただ、それぞれの物語には様々な「死」があって
その背景にある「人間の思い」が、静かな哀しみを伴って迫ってきます。
「号泣必至!」というほどの強烈さではなくて
“ 人間って哀しいよね ” といった、小さな優しさが感じられるお話といえばいいでしょうか。
私たちの内面が持ち合わせるダークサイドをテーマとした話もありますが
“ それもまた人間だよね ” と訴えているような気がします・・・
・・・ネットなどの書評を見ると
『瑠璃』という話がいちばん評判が芳しくないんですけど・・・
私は逆に、このお話がいちばん好きでした。
何故好きかと聞かれても答えに窮するところなんですけど・・・(汗)
ここで描かれるひとりの破天荒な女性:ルコが、とっても魅力的に思えたんですよね。
人間のとる行動って
しばしば理屈では説明のできないものだと思うんです。
人は誰でも強さと弱さを併せ持っている。
それは二面性などではなくて
どちらもその人の本質である、と。
そして突き詰めれみれば
人は誰でも弱いのだ、ということじゃないでしょうか。