人気ブログランキング | 話題のタグを見る

D’s(ディーズ)さんのぶろぐ

dscorp.exblog.jp Top

『震える牛』 相場英雄

 
私は基本的に文庫本派なんですが、この本だけはどうしても待てなかった・・・

『震える牛』 相場英雄_a0153243_1058575.jpg



・・・ネット上では
帯宣伝にある “ 平成版『砂の器』誕生!” の文句について議論されているようですので、敢えて帯付きの写真を掲載させていただきました。


継続捜査班に属する田川信一は、2年前に発生した『中野駅前・居酒屋強盗殺人事件』の継続捜査を命じられます。
事件の側面を事細かにメモを取りつつ、コツコツと外堀を固める捜査法を得意とする田川は
やがて、本件が当時の捜査班の初動ミスによって暗礁に乗り上げてしまったものと気付きます。
これはゆきずりの強盗殺人ではない。
一見、たまたま同じ居酒屋に居合わせた客が二人殺されたように見えるが、これは計画的な殺人である、と・・・

一方
ネットメディア・ジャーナリストである鶴田真純は、大規模ショッピングセンターを全国展開する『オックスマート』を取材します。
地元の小売店などをあたかも蹴散らすがごとく、強気の姿勢で店舗展開をするオックスマート。
しかしその裏に、大いなる闇が潜むことが見えてくるのでした。
「激安惣菜食品のカラクリ」
「食肉偽造問題」
「BSE」

やがて
田川の追う事件と鶴田の追及するオックスマートに、奇妙な接点が・・・


(相変わらず下手くそなあらすじ説明でゴメンナサイ)


私が思いますに
本作にはふたつの側面があるわけです。
まずはもちろん、ミステリー小説としての側面。
もうひとつが、社会派小説としての側面、です。

まずミステリーとしての本作について、私は普通に楽しめました。
特段のサプライズがあるというわけではありませんが
主人公である田川という人間のつぶさな捜査方法は、大きなジグソーパズルの1ピースをひとつひとつ埋めていくような丁寧さを連想させて好感が持てました。

そしてやはり本作で目が行くのが
社会派小説として描かれている「大手ショッピングセンターの問題提起」
また、そこで売られている加工食品価格の妥当性、そしてその安全性に関する問題提起の部分です。



・・・ここに書かれていることが事実なのかフィクションなのか、もちろん私など知る由もありません。
ただ、やはり思いますに
おしなべて、モノの値段が下がり過ぎているような気はしています。

(こんなものがどうしてこの値段で買えるの?)

それは消費者としてはありがたいことなのでしょうが
はたしてこれは適正な価格と言えるのだろうか?と、一抹の疑念を抱かずにはいられないところでもあります。
私たちがモノを買うとき
その価格の背景には様々な費用が内包されているわけですよね。
材料費、加工費、運搬費、そして人件費、さらには利益・・・
それら諸費用は、適正なバランス(そのバランスが問題なのですが)で価格に乗せられて然るべきです。
それが健全な経済活動であります。

・・・私は
「安かろう悪かろう」を提供する企業側を糾弾することも大切ですが
ただ「安い」というだけで食指を動かしてしまう私たち消費者もまた再考べきなのではないか?などと思いました。
(実はこれ、私ども葬儀業界でも言えることかと・・・)


私たちの多くは
消費者でありながら同時に提供者でもあるわけです。
どちらか一方の側で居られはしない。
ならば
自分が提供するときは消費者の側に立ち
自分が消費するときには提供者の側に立って、考えていく必要があると思うのであります。



ところでひとつだけ苦言を m(_ _)m
この表紙のデザインだけは如何なものかと・・・(汗)
どうしてもジョージア・オキーフの作品を連想させてしまいますもんね・・・

『震える牛』 相場英雄_a0153243_12224440.jpg

                         『Cow's Skull: Red, White, and Blue』
by dscorp-japan | 2012-08-02 00:10 | | Comments(0)
line

これでも葬儀屋さんのブログなのだ


by dysmas
line
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31