私のルルド巡礼記 ⑧
・・・しかし
皆さん、フランス料理ってホントに好きですかァ?
いやネ
そりゃ~たまにゃ良いかもしれないけど
毎日フランス料理を食べ続けてると、ホントにウンザリするもんなんですヨ(汗)
食堂へ行くたびにゴテゴテした料理を口にして
デザートと称した『桃のシロップ漬け』ばっかり出されて(日本で言えば『桃缶』ですね)
さらには以前にも書きましたが
毎食チーズ臭いもんばっかり食ってると、体臭がチーズ臭くなるんですヨこれが。
私は一切の偏食が無い人間ですが
それでもさすがに参りましたよ。
何たって、いちばん美味しいと感じることが出来たのは
毎朝出されるクロワッサンとフレンチコーヒーだったんですから。
私は断然『ご飯派』なんですが、フランスで食べるクロワッサンはホントに美味しかった ♪
♢
さて、そんな話は置いといて。
ルルドでの日々も佳境に入り
復活祭の前々日、つまり『聖金曜日』を迎えた日。
『聖金曜日』とは、イエスの受難を記念する日であります。
この日の夕刻に案内がありました。
「地下聖堂で『キリストの受難』を記念する祈りがあります。
どうぞご参加ください」
・・・地下聖堂・・・?
ルルドにそんなもんがあるの?
写真では分かりづらいかもしれませんが、かなりの規模でした。
イメージで言うのなら “クジラのお腹の中”。
思わず、ピノキオとゼペットじいさんのお話を思い出してしまいました(笑)
式は粛々と進み・・・と言いたいところですが
何というタイミング、といいますか
まさに間もなく御聖体拝領というとき、私がお世話させていただいていたH君が言い放つわけです。
「ト・レ!(トイレ)」
・・・エェ~!?もう少し我慢できない?
「デ・ル!(出る)」
仕方ありません(汗)
H君を連れて、私はホテルに戻りました(それも結構早く走って)。
H君が用を済ませるのを待って
(もちろん “後処理” はH君自ら『ゴシゴシ!』です)
しばしH君と二人で、歌を歌って過ごしました。
・・・会話のままならないH君にとって
音楽はとっても大切な自己表現の方法だったように思います。
普段の会話(というか意思表示)は、その殆どが単語でした。
しかし歌となると、かなり長いメロディも口ずさむことが出来たんですね。
二人で何を歌ったのかはもう忘れてしまいましたが
テレビ・コマーシャルの歌とか、当時日本で流行っていた歌とか
私が歌の出だし部分を歌ってあげると、H君はちゃんとその続きを歌うことが出来たんです。
あのひとときは楽しかったなァ・・・♪
♢
さて。
H君が眠りに就いた後
私はある方と約束があったので、待ち合わせ場所である喫茶店に向かいました。
待ち合わせの相手は、インドからやってきたインド人司祭でした。
その神父様とは、ひょんなご縁でルルドで知り合ったのでした。
待ち合わせ場所に行くと、その神父様はホントに嬉しそうに手を振って私を招きました。
「ずっとキミと話がしたかった」
・・・考えようによっては、ちょっとアブナいセリフではありますが・・・(汗)
「私たちインド人がここへ来るのは本当に大変だった。
インドでの一般的な収入で言えば、約半年分の費用がかかった。
私たちは充分な医療も受けることが出来ない。
それはお金の問題ではない。
医療機関が少ないのだ。
だから私たちはマリア様に頼るしかなかった」
聞けば
インド人巡礼者の多くは、早期治療を受けることが出来ない為に病状が悪化してしまった人たちなのだそうでした。
今でこそインドと言えば発展が著しい国のひとつに数えられましょうが、あの当時はそうでなかったということなのでしょう。
私がタバコ(ピース・ライト)を手に取ると
その神父様は遠慮しがちに「一本もらえないか?」と言ってきました。
タバコを渡して火を付けてあげると、その神父様は嬉しそうに紫煙をくゆらせながら言いました。
「何てウマいタバコなんだ。
日本ではこんなに美味しいタバコがあるのか?」
そう言われちゃ~しょうがない(笑)
持っていたタバコをひと箱そのまま差し上げました。
「もうひと箱もらえないか?」
・・・おいおい、なかなか無遠慮な人だなァ(笑)
「インドに帰ったら、キミ(私)のことを思い出して一年に一本だけ吸いたい」
・・・。
何なんだ、そのセリフは(大汗)
・・・私が訝っているのが分かったんでしょう
その神父様は慌てて言いました。
「私はここへ来るのに本当に大変な思いをした。
キミには分かるまいが、本当に命がけだった。
ルルドへ来て、こうしてキミと会っていることが私には奇跡的なのだ。
おそらく私は、もう一生ここには来られないだろう。
しかし今回の思い出だけで、私は一生神父としてやっていける。
キミのタバコを、ルルドの思い出にさせてくれ」
“ Look at my eyes ”
・・・その神父様は泣いていました。
「私はもう充分に癒された。
マリア様に感謝の気持ちでいっぱいだ」
(続く・・・って言っても大した話はないけど)