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私のルルド巡礼記 ⑦

 
さて。
今回は、私がルルド巡礼に同行するにあたって担当することとなった、H君についてお話ししようと思います。



当時のH君、たしか20歳か21歳だったと思います。
身長が大体165㎝くらい。
体重は・・・しっかり80㎏以上ありましたね~
でも身体的な障害は特に無かったので、彼の体重が私の負担となる場面は少なかったと思います。

彼の抱えていた障害に関して、その詳細をここで記すことは控えます。
ただ、基本的に会話のキャッチボールは困難でした。
彼が意思表示する際に発する言語は単語のみ。

「ジューシュ(ジュース)!」
「スパゲッチ(スパゲッティ)!」
「タベユ(食べる)!」

食べるの大好き(汗)

「トレ(トイレ)!」

トイレに行きたいときにはちゃんと申告してくれます。
ただ、その意思表示があったときはすでに彼のなかで “風雲急を告げる” 状態(汗)であることが多かったので
こちらは常に、冷静且つ迅速に対応することが求められました。


・・・H君との短い生活で感じたことは
「教えればできる」ことが多かった、ということです。

当初、H君のお母様から打診されていました。

「申し訳ないのですが
Hがトイレに行った際の世話をお願いいたします。
何もできないものですから」

H君がトイレに入る際には私も同行しました。
彼が用を済ませる間、私はそばに付き添うことになります。
「終わった?」
と尋ねると、H君は無言のままお尻をちょっと持ち上げます。
“拭いてちょうだい” の合図です。
そこで私がトイレットペーパーで、H君のお尻を拭くわけです。

・・・何てことない作業です。
ただ
何度かそういう作業を繰り返したとき、思ったんです。

(こいつホントは自分でしたいんじゃないか・・・?)って。

多分Hは私に対して特に警戒心は無かったと思うんですよ。
でも、やっぱりトイレくらいひとりで入りたいんじゃないかと思ったんです。
そりゃ~きっとイヤでしょ
他人さんに見られながらの排便なんて。
(いや、他人じゃなくても!)


たしかルルドに入ってから2~3日後だったと思うんですが、試してみたんです。
とりあえずトイレには同行して
排便前のズボン脱ぎは自分で出来たので
① 自分でお尻を拭く
② ズボンをはく
③ トイレの水を流す
これらの作業を順番に教えてみることにしました。

「H、お前、自分で拭きたいんじゃない?」

H君は目も合わせず、黙ったままです。
ちょっと難しい質問だったのかもしれません。
じゃあ、ということで
いつも通りトイレに同行して、彼が用を済ませるのを待ったところで
トイレットペーパーをたたんだものを、H君に渡して言ってみました。

「ごしごし。」

・・・するとどうでしょう。
彼は一発で、自分のお尻を拭き始めるじゃないですか!
自ら声に出しながら。

「ゴシゴシ!」

「・・・まだ拭く?」

「フク!」

「ごしごし?」

「ゴシゴシ!」

「・・・H、やるじゃん・・・ ♪」



・・・はい。
その後のH君のトイレ、毎回彼自身がお尻を拭く作業をやり遂げました。
残念ながらズボンをはくのはちょっと苦手のようで、大体の感じではいて出てきたところを私が直してあげましたが。
水だってちゃんと流せましたよ ♪


あと
「ありがとう」と言うことも覚えてくれました。

それまでH君は
誰かから食べ物や飲み物をもらったら、そのまま何も言わずに口にしていたんです。
周りの方も若干甘やかしていたのでしょうか・・・。
とにかくこれじゃイカン!ということで、教えてみました。

「何かをもらったら『ありがとう』と言いなさい」

「アディガト。」

「そう、『ありがとう』。」

「食べる」「飲む」という行為は、H君のなかで大きな比重を占めていました(笑)
ホテルの食堂は、H君の大好きな場所でした。
自分の分を食べ終わると、当たり前のように他の方の料理に手を伸ばします。

・・・それが正しいのかどうか分かりませんが、私は注意しました。

「ダメ!」

「タベユ!」

「ダァ~メ!」

「タベユ!」

同席の他の方々はにっこり微笑んで仰ってくださいます。

「いいのよH君。はい、どうぞ ♪」

「・・・H、何て言うんだ?」

「タベユ!」

「・・・じゃなくて、お礼は?」

「アディガト!」

もしかするとH君のなかでの「ありがとう」は、一種の通過儀礼的な言語に過ぎなかったと思います。
「ありがとう」を言いさえすれば何でももらえる。
それは本来的な「ありがとう」ではないけれど
でも、これからH君が社会生活をしていくなかで「ありがとう」は、彼にとって非常に重要な言葉だと思ったんですね。


・・・でもね
H君とマッサビエルの洞窟(聖母マリアが御出現されたという場所)に行った際にも教えたんですよ。

「ここにマリア様が現れたんだよ、マ・リ・ア・さ・ま。」

「マァ・ディー・ア!」

「そう、マ・リ・ア・様。
お前のもう一人のお母さんだよ」

「マァ・ディー・ア!」

「そうだよ、マリア様には何て言うの?」

「・・・アディガト!」


・・・これ、作り話じゃありませんからね。


(つづく。あとちょっとだけ)
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by dscorp-japan | 2011-09-07 21:39 | あったこと | Comments(0)
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これでも葬儀屋さんのブログなのだ


by dysmas
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