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D’s(ディーズ)さんのぶろぐ

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『火の粉』 雫井脩介

 
雫井脩介さんといえば『犯人に告ぐ』が有名ですよね。
豊川悦司さん主演で、映画にもなりました。
それから
『クローズド・ノート』も映画化されましたっけ。

『火の粉』 雫井脩介_a0153243_019217.jpg
2003年発表


でもここではこの作品。
『冤罪』というキーワードを軸に、お話は進みます・・・

裁判官である梶間勲は、ある殺人事件の被告・武内真伍に対して無罪判決を言い渡します。
武内は釈放され、一方の梶間は裁判官を退官。
二年後
大学で教鞭をとる梶間に武内が近付きます。
梶間は、被告として辛い思いをしてきたという武内に同情しつつ、彼を受け入れます。
程なくこの武内
何と、梶間の自宅隣に引っ越してきます。
梶間は仄かな違和感を覚えながらも、梶間一家と武内との “ ご近所づきあい ” がはじまります。
紳士的で
優しく献身的な武内と梶間の家族との距離は、日ごとに親密になっていきます。
そんななか
梶間家の周りで、不審な出来事が次々と起こり・・・

(相変わらず、下手くそなあらすじ説明ですみません・・・)


「隣に引っ越してきた隣人が怪しい」という設定は、特に目新しいものでもありません。
洋邦を問わず、この設定での映画とか沢山ありますよね。
このお話の“もう一捻り” が『冤罪』というキーワードです。
自ら無罪判決を言い渡した梶間に襲いかかる不安と疑念が、このお話を深いものにしていると思います。

そして
これは小説の解説文にもあるのですが、登場人物の心情描写が非常に深いです。
梶間勲の家族ひとりひとりの心情が、本当に丁寧に描かれています。
特に女性の心情!
外では裁判官として人を裁いてきた梶間の
家庭でのダメ親父っぷりを、致し方なしと受け入れる妻。
一方で、梶間の妻と姑の関係
更には小姑との水面下での確執
この物語の本題とは別に、ものすごくリアルに描かれています。

事件解決の為のキーマンは
梶間の息子である俊郎の嫁・雪見ですが
一転「家族」という視点で読んでいくと、梶間の妻・尋江の存在が光ってきます♪
イメージは
“ 日本のお母さん ” 京塚昌子(古いか?)
梶間家の嫁という立場がために様々な苦労をしているにもかかわらず、なお家族全員を優しく見守り続けるという描写の秀悦なこと!
もしかすると、原作者の理想の母親像なのかも?と勘繰ってしまいたくなるくらい。
(少なくとも私は、このお母さんならパーフェクトです♪)

『火の粉』は雫井脩介さんにとっては4作目の作品であり(今更?)と思われるかもしれませんが、面白いものは面白いんです。
有りがちなプロットと、侮るなかれ。

ただのミステリー小説とか推理小説では飽き足らない方は是非ご一読を♪
(読み始めたら止まんないぞォ~)

『火の粉』
幻冬舎文庫 し‐11‐4
(¥762+税)




by dscorp-japan | 2010-09-28 01:17 | | Comments(0)
line

これでも葬儀屋さんのブログなのだ


by dysmas
line
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